福祉施設で働く障害のあるメンバーとスタッフによる3つの展覧会

展覧会に行ってきました
写真:吉永朋希

展覧会レポートVol.10

2026年2月18日・3月25日他度々 訪問

展覧会の準備が終わって乾杯する吉永さんと山村さん   写真:吉永朋希

今回は、福祉施設で働く”障害のあるアーティスト”と”スタッフ”による3つの展覧会についてご紹介します。※うち一つはすでに会期終了しています。

奈良市内の福祉施設 たんぽぽの家では、メンバーたち(たんぽぽの家では施設利用者のことをメンバーと呼んでいます)の多くが創作活動やものづくりを仕事にしています。
日常的には、メンバーの創作をスタッフが支援しているのですが、今回ご紹介する展覧会では、メンバーとスタッフが「一緒に」展覧会に出展しています。つまり、同じ出展者として作品を出展したり、共同して作品を創ったりしています。

その企画は元々、たんぽぽの家のベテランスタッフ吉永朋希さんが10年以上かけて構想し続けて、機の熟すのをはかっていたものです。
吉永さんご自身もプライベートで作家として絵を描き続けていて、今回一緒に展示をしているメンバー山村晃弘さんとの15年以上の付き合いの中では、作家として刺激や影響を受け続けてきました。
いつかは一緒に展示をしたいと思い続け、ようやく機が熟し、他のスタッフとメンバーとの展示も合わせて3つの展覧会を行うことになったのでした。

一般的、日常的には、施設の生活の中で支援する側、される側であり、切磋琢磨しあう関係性とは少し違ったイメージでとらえられがちかもしれません。でも、実際の福祉の現場では、スタッフとメンバーは一緒に日々をつくり、刺激し合い影響されながら過ごしています。

私は、通常あまり着目されないそのことが、この3つの展覧会ではよく現れていてとてもいいなと感じましたし、スタッフが、通常は主役として立てられる障害のあるメンバーと同じ強さで作品を出してく、創っていく展示はやはり経験したことがなく、とても新鮮でした。

・・・

勝手な想像ですが、展示に向けての創作過程では、相手への羨望感や、戦友あるいはライバルのような丁々発止の感覚もあったのではと想像しています。というのは、私だったらそうだろうなという個人的な想像でしかありませんが…。

ただ、実際の展示から伝わってくるのは、それぞれの出展者のワクワク感や楽しさや、ぜひこれは観てほしいという自信です。
実際、私は観ていてとてもワクワクしましたし、とても面白く、夢中になって展示を楽しみました。

「たかはしくんべんとうコレクション」
2026年2月12日(木)〜3月7日(土)11:00ー17:00  ※日〜火・祝日休み
※すでに会期終了
会場:六条山カフェ
出展作家:風香、髙橋桜介
https://tanpoponoye.org/news/general/2026/02/000011625/

スタッフのたかはしくんが日々作ってくるお弁当を、メンバーの風香さんが写真に撮ったり、紙の他、ガーランド、うちわ、Tシャツなどに描いています。
本展ではその膨大な数から選ばれた写真やイラストなどと共に、二人の会話やまつわるエピソードも展示しています。
たかはしくんのお弁当を撮り始めたきっかけは(▽写真左)…。映えではなかった…。

他にもたくさん展示されていた二人の会話のやりとりには、どれも独特の空気感(魅力)があふれています。

ただの日々のお昼ご飯でしかなかったお弁当が風香さんに撮られるようになって、野菜も入れようかなとか、ときには見栄を張ったりするあたり、言葉を超えたコミュニケーションの饒舌さや面白さも感じます。

うちわに描かれたおべんとう
会場トイレにもおべんとうが。
Tシャツに刺繍されたおべんとう
ガーランドになったおべんとう

写真も絵も会話も、どれも噛めば噛むほどじわじわ滋味深く、何度でも何度でも繰り返し味わいたくなる展示でした。

※「たかはしくんのおべんとうコレクション」の写真:髙橋桜介

「いろいろ美術館」ー 山村晃弘/吉永朋希 ー
2月24日(火)〜4月22日(水)11:00ー17:00 ※日・月・祝日休み
会場:たんぽぽの家アートセンターHANAギャラリー (奈良県奈良市六条西3-25-4
出展作家:山村晃弘、吉永朋希
https://tanpoponoye.org/hana/gallery/2026/02/000016712/

こちらは、たんぽぽの家で出会ってから15年以上の付き合いになるという山村さんと吉永さんの展覧会です。

メンバーの山村さんは作画するときに「ルール」という独自の手法を使います。
ルールは、簡単にいうと作品に描かれる形のことで、山村さんが自分で描くことも、スタッフなど他の人に描いてもらうこともあります。何をルールに選ぶかも、自分でや、誰かに選んでもらうこともあり、山村さんの作品の多くはそんな誰かとの関わりの中で生まれています。

山村晃弘さんの作品
吉永朋希さんの作品

今回の展示ではスタッフの吉永さんから2つの提案があり実現されました。
①吉永さんの作品の中から山村さんが3作品選び、山村さんがルールを描いて新たに作品にする
②一緒にお出かけ先を決めてお出かけをし、そこで山村さんが撮った写真をモチーフに、山村さんのキャンバスには吉永さんがルールを、吉永さんのキャンバスには山村さんがルールを描く。

一番上のプリントでは吉永さんの作品から自分で選んだものを山村さんが新たに創作している様子が。
お出かけの一コマ
左がモチーフとなった吉永さんの作品、右がそれをみて描かれた山村さんの作品

会場には、展覧会をするまでの行程を、吉永さんがスタッフとして山村さんに説明する資料や、お二人のおでかけ計画表も展示され、お二人の関係性や役割が交差しながらどんな風にこの企画が実現していったかの一端も垣間見られます。

この展示を観ていると、お互い作家同士のお二人が長い付き合いの中で、初めて創作で交わったその心情や感覚を(勝手に)想像してぐっとくるものがありました。
いや、それは私の個人的なメランコリックで、当人お二人はさらりと軽やかなのかもしれません。わかりませんが、外から見ると一見「支援する側」「支援される側」でありえる関係性の、このほのぼのとしつつも丁々発止な交流に想像たくましくせずにおれないのでした。

※「いろいろ美術館」の写真:吉永朋希

「ゆうことろくちゃんとおちえの世界」
3月11日(水)〜4月11日(土)11:00ー17:00 ※日〜火、祝日休み
会場:六条山カフェ (奈良県奈良市六条西3-25-15
出展作家:本間優子、六田好美、東知恵理
https://tanpoponoye.org/news/general/2026/02/000011625/

こちらは、乙女で華やかな世界観が大好きで普段からご自分でも絵に表現している、メンバーの本間優子さんと六田好美さんと、そのお二人の世界観が好きだというスタッフ東 知恵理さんの、とっても素敵な絵本の展覧会です。

本間さん、六田さん、東さんそれぞれの一押しシーンやこだわり、感想が語られている
表紙1
表紙2

表紙は数パターンあり、美しい装丁は手仕事によるものです。
これだけでも見応えがあります。

物語のはじまり
小松が好きなシーンの一つ

「フローラと小さな勇者アンドレ」のキャラ設定や物語などは、すべて一から3人で創られました。

物語にはとにかく夢があって、思わず笑ってしまったりハラハラしたり、ロマンスも、ピリッとしたスパイスも効いていて、とにかく面白い!
それぞれの登場キャラクターたちも設定がそれぞれに個性豊かで、こんな人いそう!とか、悪いやつだけど、憎めなさもある、、、とか、会ってみたくなるキャラクターばかりでした。

六田さん、本間さん、東さん、3人の女の子たちが放課後、キャッキャいいながら好きなものを言い合っているような、キラキラした青春のような感覚も伝わってきて、それだけでも胸が踊りました!

「ゆうことろくちゃんとおちえの世界」の写真:小松紀子

福祉施設ではメンバーとスタッフで当然にそれぞれの役割や立場があるのですが、今回の3つの展覧会では各展覧会それぞれの向き合い方でそれらを横に置いて、人と人としてのくんずほずれつを見せてもらえたなぁと感じました。
そのこと自体が、展示された作品だけでないドラマを観せてもらったような感動があり、と同時に障害のある人の関わる展覧会ではあまりみたことがないテーマで、貴重な経験ができました。

レポート:小松紀子

たんぽぽの家
https://tanpoponoye.org/

六条山カフェ
https://www.instagram.com/rokujoyamacafe/

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