展覧会レポートVol.7
2026年1月11日訪問
吹き飛ばされそうな勢いの冷たい強風の1月日中、京都の大徳寺そばにあるアトリエみつしま Sawa-Tadoriへ行ってきました。
目的は、”もぞもぞ”する展覧会を観ることです。
「え?もぞもぞ??」って思いますよね。かわいいようなちょっと不気味そうな…
「もぞもぞ」…ミミズが土中で活動しながらその土壌を醸している様子。または、“障害”と“芸術”の両領域間を行き来しながら活動する人たちが何かモヤモヤする気持ちを抱えていて、居心地のよい姿勢を探っているような動作。
一般社団法人HAPS web site「「もぞもぞする現場 4 芸術と障害にかかわるひとたちの、アセンブリー」開催のお知らせ」より

この展覧会の主催者で京都市内に拠点のある一般社団法人HAPS(以下:HAPS)は、2022年度から各年「もぞもぞする現場」と題した実践を続けてきました。
今年度はその4回目です(文化庁委託事業「令和7年度 障害者等による文化芸術活動推進事業」)。
「もぞもぞする現場」は、芸術と障害について障害者・アーティストなどが、「そもそも」のところから考え話す場所として、もぞもぞ対話を続けながら障害のある人を含む様々な鑑賞者にひらいていくための実践を続ける場なのだそう。
そして「美術館はだれものか?」という問いのもと、美術館での鑑賞の仕方、ふるまいかたなどについて様々な視点から試行錯誤し、実践してみたのが今回の展覧会のようです。

会場受付でパンフレットをもらうと、黄色い紙が渡されました。その名も「もぞもぞさんとの鑑賞シート」。
当日は「もぞもぞさんスペシャル」というイベント日で、希望者はもぞもぞさんにナビゲートしてもらっていろんな方法で作品を鑑賞したりその場で過ごすことができるとのことでした。
もぞもぞさんというのは、「もぞもぞする現場ー芸術と障害にかかわるひとたちの、アセンブリー」に参加している市民メンバー。
せっかくなので、わたしも黄色い紙を手に体験してみることにしました。
会場内には絵画、立体、織りなどの作品がたくさん展示されていました。
また、来場者の他に、首からカードを下げたもぞもぞさんたちも何人か。
展覧会会場ですがシーンと静まり返った雰囲気ではなく、作品を前に話し込んでいたり、座って何やらされていたりと、くつろいだ雰囲気。お父さんに抱っこされた赤ちゃんも、さわってもOKな作品に手を伸ばしたりしていました。
「あー、ここはリラックスして過ごしていいのだな。」と感じられる空間。


作品をじっくりながめていると、一人のもぞもぞさんが話しかけてくれました。
「(鑑賞シートに書かれた)どの方法をやってみたいですか?」
シートに提案されている鑑賞方法は、
・話す対話鑑賞
・筆談による対話鑑賞
・からだをつかって鑑賞する
・音やオノマトペで感想を表現する
・寝ころがって鑑賞する
・つくってみる(釘打ち体験)
・メニューにない鑑賞方法で鑑賞する
会場をみると、ダンスのような動きをしている人もいましたし、他のもぞもぞさんとお話しされている方もいましたが、私は”つくってみる”をさせてもらうことにしました。


通路を挟んだ部屋には、会場であるアトリエみつしまのオーナー光島貴之さんも作品制作で使用する、釘打ちによる表現のための木材や釘類などが準備されていました。
光島さんは会場であるアトリエみつしまのオーナーでもあり全盲の美術家で、視覚以外の感覚を用いた作品制作をしています。本展でも作品が展示されていて、観たりさわったりして鑑賞することができます。

ガラス窓には宿利真希さんの作品も展示されている。

木材の中からなんとなくの感覚で一つ選び、カットシートの置かれた机につきました。
目の前にはいろんな種類の釘類があります。
自分ではあまり創作をすることがない私はどの釘を手に取るべきか迷いました。両隣ではさくさくと作業を進める方々がいてすこし焦る気持ちもありつつ、なんとか2本釘を打つ。そこから少しふっきれて「ここにこれを打ちたいな。」「このテープを貼るとどうかな。」と手が動くようになりました。そしてできたのが写真のものです。

久しぶりに何かを目指さずほぼ無心にものを作れて、新鮮な気持ちがしました。
再び展示スペースへいくと、会場に来たばかりの時とものづくりをしてみてからとで、違う印象で作品を観ていることに気づきました。何が違うんだと言われると実は言葉にしにくいのですが、オノマトペでいうと、より一層キラキラしたように感じたといいましょうか…。
会場には楽器も置かれていました。
これは、もぞもぞさんの中に音楽家の方がいて持参してくれたものでした。
作品を音で鑑賞したい人はこの楽器を使って鑑賞することもできるそうです。(日によって楽器の数は増減するようです)
私が帰る頃にはシンギングボールを鳴らす人たちがいました。


今回の展覧会では、鑑賞したというか体験したというか、そもそも鑑賞ってなんのことだんたんだろうかとか、美術館について私はどうあってほしいと思ってるんだろうかとか、他のだれかにとってはどうなんだろうかとか、展覧会に行くという行為がふんわりと広がって、よくわからなくなって、ただ、楽しいひと時をすごしたなぁというようなことを思いました。
文・写真:小松 紀子
「もぞもぞする展覧会 しつづける あいだに」
https://haps-kyoto.com/mozomozo_2025exhibition/
会期:2026年1月6日(火)~1月18日(日)11:00~18:00 会期中無休 ※最終日のみ16:00閉館
出展作家:荒井陸、中村真由美、福岡左知子、舟木花、宿利真希、山野将志、光島貴之
ゲストキュレーター:奥村一郎
料金:無料
会場:アトリエみつしま Sawa-Tadori(京都市北区紫野下門前町44)
このレポート公開時以降のイベント「ワークショップ with 宿利真希」
日時:2026年1月12日(月・祝)①13:00~ ②15:00~
講師:宿利真希(出展作家、たんぽぽの家アートセンターHANA所属アーティスト)
申込み:予約フォームから事前申込 https://forms.gle/xMDfdUdYg1vPtx8p7
定員に空きがあれば当日参加可(各回先着4名)
宿利真希さんの作品制作を体験するワークショップ。宿利さんと一緒に、ダンボールで文字やロゴマークなどを切り抜いてつくります。
主催:文化庁、一般社団法人HAPS
アトリエみつしま Sawa-Tadori
https://mtsm.jimdofree.com/
一般社団法人HAPS
https://haps-kyoto.com/
